雑草転生LEVEL X 第十三話

レスフィナは、隣町までやって来ていた。
通常なら歩いて丸1日かかる距離だが、夕方に出て日の出前には着いていた。

で、その隣町ではある事件が起ころうとしていた。

「こんな醜い体、もう見たくない。何でワタシはこんな体で生まれてきたの? もうワタシ、生きていけない!」
と、嘆いている屈強な男がいた。
男は、橋の上から身を投げようとしていた。
そして…

レスフィナは、この状況を遠くから見ていた。
そして、左脚で片脚立ちしたと同時に体を前に傾け、右脚で地面を蹴った!
もう、瞬間移動…とは言えないけど、それと思えるほどのスピードで駆け付けた。
しかし、男は既に落ち… てはいなかった。
レスフィナが片手で受け止めていたのだった。
男を片手で上げて、橋に戻した。
今、死のうとしていたのに、まだ生きていることに驚いている男。
「???」
そして気が付いた。
「この巨体を片手で持ち上げた? あんたは一体!?」

「あ~、あなた死のうとしたでしょ。こんなことやめてよ!」
レスフィナは苛立ちながらそう言った。
これで2回目だしね。

「私のことはいいから、何であなたは死のうとしたの?」

男はしゃべり出した。
「わ、ワタシは… じゃなくて! 俺はこの体が嫌になったんだ。」

「何故!?」
レスフィナは、ちょっときつめに問い詰めた。

男は覚悟を決めたようで、レスフィナに向かってこう言った。
「だってぇ~、ワタシこんな醜い体はもうイヤなの! 女の子になりたかったの!」

レスフィナは、しばらく何も言えなかった。
が、気が付いた。
これだ!と。

「じゃあ、私のこの体と交換してみない?」

「え、何? そんなこと出来るの?」

「はい、じゃあ転生!っと」
男の腰に手を当てた。

男は目をパチクリさせて、こう言った。
「ウソ? ウソウソウソウソウソ!」
男は胸に手を当てて、感激しているようだ。

「じゃあ、そういうことで。」
と言い、その場をダッシュで後にした。
あの体に未練が無かったとは言えないけど、まあお別れということで。
その後どうなったかは、あまり考えたくなかったし。

このデカい体、かなり目立つので早いうちに新しい体に変えたいな。

雑草転生LEVEL X 第十二話

「魔王のことは、伝承があると聞いたことがあるが、それ以上は知らない。」

伝承があるということは、その可能性も否定出来ないということか。
「そっかー、いるかもしれないということかな? ありがとう。」

「それと、私が王を触って殺したことになってるけど、これ、間違いだから。」

「何? そうなのか?」

「じゃあ、ラドスさんを触ってみてもいい?」

「えぇっ!? あ、ああ、あんたを殺そうとしたわけだからかまわんよ。」

「どこか痛む所ある? そうだったらより良いかもしれないけど。」

「ああ、あんたに吹っ飛ばされて背中一面がまだ痛むが、大したことはない。」

「それじゃあ…」
と、ラドスにタッチしてみた。

「あ? 死んでないし、背中の痛みが消えた!」
ラドスはとても驚いているようだった。

「そうゆうこと。私の能力は回復です。それも一瞬で。」
これを聞いて、ラドスはとても驚いていた。
そして、こう言った。

「どういうことだ? 王はレスフィナ姫のせいで死んだのではなかったというのに。」

「私が考えるに、王を亡き者にする輩がいたのではないかと。もしかしたら、王は毒を盛られていたのかも。」

「では、王が死んだタイミングを知らしめたのもそいつらの仕業ということか!」

「多分、そうでしょうね。でも、私は記憶が無いから(本当は別人なんだけど)、この件については関与しません。姫ではなく、別人として生きていくことにしますから。」

「ああ、王家はもう終わりなんだろうな。なら、その方がいいだろう。」

「はい、なので、この件は終わりにしましょう。」

とは言ったものの、レスフィナの体を借りている以上、彼女の名誉は守らなければならない。
こう言ったのは、ラドスがこの件を詮索して彼の家族に被害が出ないようにするためだ。

この先、この体のままでは行動出来ないと思い、次の体を探すことにした。
けど、今の体慣れたので結構快適だったんだけど。
次は男に戻りたいなとは思うんだけど、男がいきなり女性の体になって大丈夫かな?とか思ったりする。
う~ん、これは難しい問題だ。

だが、幸運はやってくるのだった。

雑草転生LEVEL X 第十一話

声をかけておく人。
それは、私を殺そうとした人。
何でこんな人に声をかけようと思ったのかは、私を殺す前に手が震えていて、ためらっているように思えたから。
何か事情があったのだろう。
それを聞こうと思ってる。

吹っ飛ばされた男達は、未だ動けないみたい。
まあ、死んでないでしょ。
そうしたら、一人動いている人が見えた。
近付いてみると、やっぱりだった。
私は声をかけた。
「全てが終わりましたよ。」
男は、「えっ、何が?」
と言って周囲を見て沈黙。
「一体何が?」
私は続けて、「だから、全て終わったんです。あの男はもう、いないも同然です」
男は聞いてきた。
「どういうことだ?」

「見た通り、全て私が倒しました。」

「うそだろ? 君みたいな女性が!?」

「私はちょっと特別なので。」

「・・・・・」

「聞きたいんだけど、あなたはあの時ためらいましたよね。何故ですか?」
「妻と娘を人質にされ、言うことを聞くしかなかったのだ。それより、すまなかった! あんたを殺そうとして。」
男は申し訳なさそうに、そう答えた。
「まあ、大丈夫だと思ったし、結局大丈夫だったでしょ?」
「いや、本当にすまなかった。こんな俺を許してくれるのか?」
「だから大丈夫だって。気にしないで。」
「人殺しにならなくてよかった。本当にありがとう!」
男は、心からの感謝を伝えた。
「はい、この話は終了。」と言い、手をパチンと打った。
「それで、もう一つ聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「ああ、何でも聞こう。」

「私は王を殺したと聞いたんだけど、どうゆうこと?」
捕まった時に耳にしたんだけど、その時は考える余裕が無かったけど、さっき思い出した。
「あんた、レスフィナ姫は、王に触れただけで殺した、と聞いているが。」
「姫!? 私って姫だったの?」
突然、姫だと言われて、ちょっと戸惑った。
「ああ、あんた記憶が無いのか。」
「あ、あ~、実はそうなんだよね。あいつらに捕まったけど逃げて死のうとしたんだ。それが、ある人に助けらたんだけど、また捕まってしまってそれがショックで以前のことを忘れてしまったみたい。」
「俺もあいつの仲間だったので、すまなかった。」
「まあ、それはいいとして、あなたの名前も聞きたいんだけど。」
「お、俺は、ラドスという。」
男はそう名乗った。
「更にもう一つ質問、魔王って本当にいるの?」

雑草転生LEVEL X 第十話

襲ってきた男達は全員倒し…てなかった。
あいつがいた。
リーダーの男は弓をかまえてこちらを狙っていた。
やっぱり武器を隠していたか。
「レスフィナ! お前さえ死ねば全てがうまくいくんだ!」
と、何か寝言を言ってる。
無視していたら、何か怒鳴ってる。
「ヒュッ」と音がしたと思ったら、あいつは弓を放っていた。
何か弓矢が飛んで来たので、簡単に手で受け止める。
こちとら動体視力がいいんでね。
あいつは2本同時に放ってきていた。
殺す気まんまんだな。
少しムカついたので、その矢をそのまま投げ返してあげた。
見事に胸に突き刺さった。
あ、このままでは死んでしまう、と慌てて駆け寄って行った。
はぁはぁ言いながら、今にも死にそうだった。
矢を抜いて、ヒール。
もう、一瞬で回復。
こいつは何が起こったか分からず、あたふたしている。
多分、俺は死んでしまうとか思ってたんだろう。
残念でした、ではないけど、あなたは生きてます。
さて、これからどうしよう。

レスフィナの記憶を見て分かったことがある。
それは、こいつがレスフィナの両親を殺した男だということ。
子供の頃、両親を殺したところをしっかり見ていたから。

こいつは、死ぬべきだと思ったけど、こいつは絶対に殺さない。
もし殺してしまったら、レスフィナは殺人者になってしまうので。
もう、再起不能にするしかないけど、どうしたらいいんだろう?
とりあえず、こいつを倒して殴り続けながら考えてみる。
殴られた瞬間は痛いだろうけど、一瞬で回復するから少しは苦痛になるだろう。
そうだ! 激しい苦痛を与えて回復、これを繰り返せばいいんだ、と結論に至った。

激しい苦痛といえば、骨を折ればいいじゃん。
私は骨折したことがないので痛みは分からないけど、かなりの痛みのはず。

手では回復するので、足ですることにした。
まずは、腕。
もう、徹底的に踏み砕いた。
次は脚。
これも徹底的に踏み砕く。
そしてあばら骨。
心臓に気を付けて、これも折ってあげる。
こいつは声も出ないくらい苦しんでいる。
しばらく放置してみよう。
そろそろかな、と思いヒール。
何が起こったか分からず、キョロキョロしている。
「どう、自分の犯した罪の罰よ」と言ってみるが、口をパクパクさせているだけ。
こんな状態になっているけど、可哀そうという気持ちは全く無い。
なので、また骨折地獄を味わわせてあげる。
もう、白目むいてピクピクしているだけ。
残酷だと思ったけど、これを20回繰り返した。
もう、精神崩壊していた。
こいつが犯した罪の償いは、これで終わりではない。
最後に、両手の平を踏み砕いておいた。
もう、何も出来ないだろう。

思い出した、ちょっと声をかけておく人がいた。

雑草転生LEVEL X 第九話

巫女さん達は絶望しているだろうな。
けど、これを希望に繋げていかなければならない。

なので、「私を最初に殺してください!」と叫んだ。
大剣を持った男が、こちらに向かって来た。
これで巫女さん達は大丈夫だろう。
どうやら、大きな武器を持った者は一人だけみたい。
もしかしたらどこかに隠しているのかもしれないけど、まあ大丈夫かな?

男が私の前まで来た。
見上げてみると、手が少し震えているように見えた。
この人、命令されてここにいるんだろうな。
が、意を決して大剣を振りかざしてきた。
避けてもいいけど、私は剣を片手で受け止めた。
「カシィンッ!」と音がした。
虫は外骨格なので、その特性が出たみたい。
普通は柔らかい皮膚なんだけど、なんか力を込めると硬質化するみたい。
何て便利な(笑)。
そして、腹に一発パンチした。
そしたら何と、5メートル位吹っ飛んでいった。
殺されかけたから、咄嗟のことでコントロール出来なかったみたい。
この力はもしかしたら鳥の力かも、と思った。
鳥は飛ぶために力強い筋力があるみたいだし。

私は立ち上がり、周囲を見渡した。
そうしたら、他の男達がナイフを片手に向かって来た。
巫女さん達は怯えて、一つに固まった。
うん、その方が守りやすくていいからよかった。

一人の男がナイフで刺してきた。
私は硬質化で守られているからナイフは通用しないが、サッと避けた。
男の顔面を殴って…
あ!触ったら殺してしまう、と後悔した。
が、もう遅い。
しかし、予想外のことが起こった。
男は何が起こったのか分からないような顔をして、顔を触っている。
え?
別の男が襲ってきたので殴ったら、また同じような感じだった。
後ろから襲ってきた男には膝蹴りの後、蹴ってやった。
そうしたら吹っ飛んで動かなくなった。
殴られた男達はまた襲ってくるが、殴っても無傷。
どういうこと?と少し考えたが、分かった。
これって、回復のヒールじゃないの?
普通、ヒールは手を当てて時間がかかるイメージだけど、一瞬で治した?
これって、ものすごい能力じゃないの。
次々と襲ってくるのだけど、対処法が分かった。
殴って吹っ飛ばせばいいじゃない、と。

で、ここからは殴って吹っ飛ばす、の連続。
最初は力を込め過ぎて、吹っ飛び過ぎて丘から落ちるところだった。
なので、微妙に力を加減した。
難しいな。

 

雑草転生LEVEL X 第八話

翌朝、生贄の儀式の準備が始まった。
私達は馬車に乗せられて、どこかへ向かうようだった。
その他の者たちは歩いて行くようだ。
どこに向かうか、大体方角が分かった。
これは、鳥の能力なんだろうな。
南方面に行くみたいだけど、そっちは山の方だな。
それから半日以上経過した。

目的地に着いたみたいで、私達は降ろされた。
巫女たちは、手の縄をほどかれていた。
そして衣服を脱がされた。
私は、剣で縄を切られ、剣を胸元に当てられたまま衣服を脱がされた。
ああ、手で触られると死んじゃうからね。
それで、黒いワンピースの様な服を着ろと言われた。
皆、指示に従う。
これが儀式用の服か。
そして始まった。


ここは、小高い丘だった。
何やら地面には魔法陣?が描かれている。
が、下手くそだな(笑)。
線はガタガタで文字だか記号だかも汚いし。
こんなので魔王を召喚出来るわけないと思った。
男達の方を見たけど、魔術師らしき人もいない。
こんなレベルの低さで、よくこんなことを思い付いたなと。
一体何が目的なんだろう。多分、魔王を手に入れて世界を掴む、とか考えてたんだろう。
もう、考えが浅はかすぎて笑ってしまう。
こんなやつら、さっさと片付けてしまおう。
けど、人と戦ったことないけど、大丈夫かな?
まあ、この力があれば何とかなるでしょ。

それにしても、魔王なんて存在してるの?
この世界のこと全然知らないので何とも言えないが。
魔王がいるなら、モンスターがいてもいいのにそんなものに全く出会ってないんだけど。
この世界のこと、全然分からない。


まず、私たちは魔法陣の中に円状に立たされた。
それで、円の外に頭を向けて土下座の様な姿勢にさせられた。
この体勢にされて気が付いた。
首を切るつもりだな。
だけど、そうはいかないから。

雑草転生LEVEL X 第七話

時間は少し前のことになるけど、集落に着く前に農作業をしている人達の声が聞こえてきた。
それを聞いてビックリした。
今まで聴いたことの無い、何語でもない言葉だった。
よく聞いてみるが、さっぱり分からない。
ああ、ここはやっぱり異世界なんだと実感した。

そして少し歩いていると道端で会話をしている人がいた。
それが聞こえてきて、えっ?となった。
なんと、ちゃんと会話の内容が分かってしまった。
え~?、この世界に適合したのかな?と、そのまま歩き続け、集落に到着した。


私と巫女達は、両手を後ろ手に縛られて拘束されている。
私が転生する前のレスフィナも縛られていたんだろうけど、よく逃げられたなと思った。
必死だったんだろうな。でも死ななくてももよかったのに。
まあ鳥になって生きてるんだけどね。
幸せとは言えないかもしれないけど、残りの人生(鳥生?)を生きてほしい。

男達の話し声が聞こえてきた。
レスフィナ(私のことか)のことを言っているようだ。
何と、彼女は、触れた人を殺してしまうと。
それで王を殺したらしい。
えぇっ!? 私にそんな能力があったの?と驚いてしまった。
それで縛られているんだわ。
ああ、このことで彼女は死のうとしたのか…
ちょっと悲しくなった。

考えたけど、、この人らに触れて、こ〇してしまおうということをちょっと考えてしまった。
まあこんな奴ら生きていない方がいいしね。
で、これからのことをちょっと考えてみた。

考えていたら、簡素な食事を渡された。
最後の食事ということだろう。
一応食べておいたが、全然美味しくなかった。
巫女さんたちは、全く食事に手をつけていなかった。
まあ、これからのことを考えるとそうなるだろう。
生贄の儀式は明日になるだろうと、眠ることにした。
明日が本番だ。
さて、どうやって反撃しようか、ちょっとワクワクしてきた。
生前の私ってどんな性格だったか忘れたけど、こんな性格だったっけ?
まあ、どうでもいいんだけどね。

男達が何やら話をしていたが、リーダーの男が全員に向かって何か言ってた。
そのリーダーの顔をじっくり見ると、彼女の古い記憶が呼び覚まされた。
古い記憶だったらしく、思い出すのに少し時間がかかった。
思い出した! あの男は!